日本海東北自動車道(日本海東北道・日東道)を走行していると、ところどころに料金所が存在せず、ETCのゲートを通ることなくそのまま本線を通過できる区間が現れます。また、一部のインターチェンジには料金所そのものが設置されておらず、一般道へ無料で降りられる場所も数多く存在します。

実は、日本海東北道は全線が有料というわけではなく、「有料区間」と「無料区間(新直轄区間)」がパッチワークのようり入り混じった、非常に複雑な構造を持つ高速道路なのです。本記事では、一般のドライバーには聞き慣れない「新直轄方式」という無料区間がなぜ存在するのかという理由から、どこからどこまでが無料なのか、そして無料区間を挟んだ場合の複雑なETC料金の計算方法まで、ドライブ前に知っておきたいお金と仕組みの疑問をわかりやすく解説します。

日本海東北道の「無料区間」はなぜ存在するのか

高速道路といえば「高い通行料金を払って走るもの」というイメージが強いですが、なぜ日本海東北道には無料で走れる区間が存在するのか、疑問に思う方も多いはずです。その背景にある国の制度について解説します。

高速道路なのに料金がかからない「新直轄方式」の仕組み

日本海東北道の無料区間は、正式には「新直轄方式(しんちょっかつほうしき)」によって整備された区間と呼ばれます。通常、高速道路(NEXCOが管理する有料道路)は、建設にかかった莫大な費用を、開通後に通行する車から「通行料金」として少しずつ回収していくというビジネスモデルで成り立っています。

しかし、2003年の道路公団民営化の議論の中で、「将来的に通行料金だけで建設費を回収できる見込みがない(つまり、赤字になることが確実な)地方の高速道路」については、NEXCOに建設と管理を任せるのではなく、国と地方自治体が税金で直接建設し、そのまま無料で開放するという新しいルールが作られました。これが「新直轄方式」です。この方式が採用された区間は、建設費の回収を目的としないため、完成後は半永久的に無料で通行することができます。

採算性と地方の生活インフラとしての役割

日本海東北道は、太平洋側の主要な高速道路と比べると圧倒的に交通量が少ない路線です。もし全線をNEXCOによる有料道路として整備しようとした場合、採算が取れないため、いつまで経っても建設の許可が下りず、沿線の地方都市は永遠に高速道路網から取り残されてしまうという危機に直面していました。

そこで、新潟県北部や山形県沿岸部、秋田県沿岸部の一部区間を「新直轄方式(無料区間)」に切り替えることで、採算度外視で早期の開通を目指したのです。鳥取道の無料区間を活用!立ち寄るべき絶景ポイントと必須サービスエリアの記事でも紹介されている通り、日本海側や山陰地方の高速道路にはこのような新直轄方式が多く採用されています。これらは単なる移動手段ではなく、救急車の迅速な搬送や、災害時の避難・物資輸送ルートという「地域住民の命を守る生活インフラ」として機能させるために、税金が投入された結果として無料化されているのです。

有料区間と無料区間の具体的な見分け方と境界線

では、日本海東北道を走っている際、今自分が走っているのが有料区間なのか無料区間なのかをどうやって見分ければよいのか、迷うことも少なくありません。その境界線となる施設について解説します。

新潟・山形・秋田の県境をまたぐ複雑な区間構造

日本海東北道の区間構造は非常に複雑です。まず、起点の新潟中央JCTから荒川胎内IC(新潟県)まではNEXCO東日本が管理する「有料区間」です。しかし、そこから北の荒川胎内IC〜朝日まほろばIC間は「無料区間」となります。さらにその先、山形県のあつみ温泉IC〜鶴岡JCT間も「無料区間」ですが、鶴岡JCT〜酒田みなとIC間は再び「有料区間」に戻ります。そして酒田みなとICから遊佐比子IC間はまた「無料区間」になり、秋田県の象潟IC〜河辺JCT間もすべて「無料区間」というように、目まぐるしく入れ替わります。

これらをすべて暗記する必要はありません。一番簡単な見分け方は、走っている最中に「ETCゲート(料金所)を通過したかどうか」です。有料区間と無料区間の境界線には、必ず「本線料金所」または通常のインターチェンジ料金所が設置されています。

ETCゲートの有無と「本線料金所」の役割

無料区間の起点となるインターチェンジ(例えば荒川胎内ICなど)の手前には、高速道路の本線上を遮るように「本線料金所」という巨大なゲートが設置されています。有料区間から走ってきた車は、ここで一旦通行料金の精算(ETCカードへの課金)が行われます。

本線料金所を通過した先は、完全に無料の区間となります。無料区間内にある各インターチェンジには、料金所という施設自体が存在せず、一般道の交差点に直接つながるだけのシンプルな構造になっています。つまり、出口に料金所がなければ、そこは無料区間を走ってきた証拠です。次に再び料金所(本線料金所や有料のIC入口)が現れるまでは、いくら走ってもお金は1円もかからないと安心してドライブを続けて問題ありません。

無料区間(新直轄区間)を走る際のドライバーのメリット

単に通行料金がかからないという以外にも、無料区間だからこそ享受できる長距離ドライブの大きなメリットがあります。

途中下車して道の駅や一般道の店舗を自由に利用できる

無料区間を走る最大のメリットは、「いつでも何度でも、無料で一般道に降りてまた戻れる」という圧倒的な自由度の高さです。有料区間の場合、一度高速道路を降りてしまうと料金計算がリセットされ、トータルの通行料金が割高になってしまうため、「本当は道の駅に寄りたいけれど、料金がもったいないから我慢して高速のSAで済ませよう」という心理が働きます。

しかし無料区間であれば、インターチェンジに料金所がないため、途中下車への金銭的なペナルティは一切ありません。トイレに行きたくなったら最寄りのICで降りてコンビニに行き、お腹が空いたら別のICで降りて地元の美味しいレストランに入り、用が済んだらまた一番近いICから本線に復帰する、といった具合に、一般道のバイパスと同じような感覚で高速道路を乗り降りすることができます。

燃料補給や食事休憩の計画が立てやすい

日本海東北道は、本線上のSA・PAにガソリンスタンドがなく、食事をとれるフードコートも非常に少ないという弱点を持っています。しかし、無料区間であればこの弱点を完全に克服することができます。

燃料メーターが半分に近づいたら、スマートフォンで現在地周辺のガソリンスタンドを検索し、無料区間のICから気軽に降りて給油を済ませることができます。食事に関しても、退屈なPAの自動販売機で我慢する必要はなく、沿線に点在する「道の駅あつみ」や「道の駅にしめ」などに自由に立ち寄り、豪華な海鮮丼や名物グルメを堪能することができます。無料区間は、単なる移動時間を「寄り道を楽しむ観光の時間」へと変えてくれる最高のボーナスステージと言えるでしょう。

料金計算の注意点!無料区間をまたいだ時のETC料金はどうなる?

有料区間と無料区間が混在していることで、ETC料金の割引(深夜割引や休日割引など)がどのように適用されるのか、疑問に思う方も多いはずです。

有料区間から無料区間へ抜ける際の精算の仕組み

例えば、新潟中央JCT(有料)から入り、途中の荒川胎内ICの本線料金所で精算を済ませて、そのまま無料区間の朝日まほろばICで降りた場合、料金がどのように計算されるのか、気になるところです。

この場合、料金が発生するのは「新潟中央JCTから荒川胎内ICまで」の区間のみです。荒川胎内ICの本線料金所を通過した瞬間に、その区間分の料金がETCカードから引き落とされ(またはクレジット決済として記録され)ます。そこから先の無料区間については課金システムが介入しないため、全く気にする必要はありません。システム上は「荒川胎内ICで完全に高速道路を降りた」のと同じ扱いになります。

深夜割引や休日割引の適用条件と途切れるケース

ここで注意しなければならないのが、ETCの「深夜割引(深夜0時〜4時の間に走行)」や「休日割引(土日祝日)」の適用条件です。これらの割引は、有料区間の入り口料金所から出口料金所までの「一回の走行(一筆書きの走行)」に対して適用されるのが原則です。

日本海東北道のように、途中で無料区間を挟むルートを走る場合、例えば「有料区間A」→「無料区間B」→「有料区間C」と乗り継ぐと、有料区間Aと有料区間Cはシステム上「全く別の走行」として独立して計算されます。そのため、有料区間Aを走っていた時間は深夜割引の時間帯だったのに、無料区間Bをのんびり走っている間に朝の4時を過ぎてしまい、有料区間Cに入った時には深夜割引が適用されなくなってしまう、という事態が起こり得ます。無料区間を挟むルートでETC割引を狙う場合は、それぞれの「有料区間の料金所を通過する時間」を正確に把握しておく必要があります。

まとめ

日本海東北道の「無料区間(新直轄区間)」の仕組みと、料金計算に関する注意点について解説しました。

採算性の問題から新直轄方式として整備された無料区間は、地方の重要な生活インフラであると同時に、観光客にとってもお財布に優しく、自由に途中下車して道の駅や周辺グルメを満喫できる素晴らしいシステムです。有料区間と無料区間の境界には必ず本線料金所があり、そこを通過した先は完全に無料になるというルールさえ覚えておけば、複雑な料金計算に怯える必要はありません。ETC割引の時間帯またぎにだけ少し注意を払いながら、途中下車の自由を存分に味わえる日本海東北道ならではの気ままなドライブをぜひ楽しんでください。

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